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暗闇の向こうに見えるものを目指して。(書評) [雑文]

@今、飛蚊症(ひぶんしょう=視界に虫のような影が現われる現象)のことで、眼科の受診を受けようかどうか迷っている。

@それまでも自分の眼の視界に飛蚊症は現われないことはなかったが、それは透明な小さい泡のようなものだったり、細い糸ミミズの切れ端のようなものであった。それがここ最近、黒い埃のようなものが左の目の視界に出現するようになり、もしや・・・と思っていた矢先、こんな本を読んだ。↓



まっくらな中での対話 (講談社文庫)

まっくらな中での対話 (講談社文庫)





@薄明すらない、完全な真っ暗闇で、視覚がちゃんとある我々を迎えて行う、面白いエンターテイメントだと、主催者の志村希世恵さんや、様々な理由で視覚を失ったアテンドさんたちは言う。決して「視覚障害者理解の為」の「お勉強」的な、「福祉事業」的なものではないと本書にもある。

@あくまでも、日々の生活のしがらみや、悩み、とらわれていることから解放される、エンターテイメントなのだ。普段視覚に殆んど頼っている私たち「目明き」。そういう目明きたちが突然、完全なる「暗闇」に入り、そこで初めて出会う仲間たちと童心に返ってはしゃぎまわり、相している間に楽しい時間はあっという間に過ぎ去り、外へ出たときは光が思いっきりまぶしく感じられるとや。

@闇の中で、木の匂いってこんなだったんだ、花の香りはこんなだったんだ…と言った感じで、視覚以外の聴覚、嗅覚、味覚、触覚が普段よりも鋭敏になり、目明きたちはどんどん子供の頃に体験した様々な事を懐かしさと共に思い出すらしい。そうして、脳から心から、自分の全てが思いっきり癒され(「癒しとは全体性の回復」とは著者の一人・茂木健一郎も言っていることだ)、暗闇を出る頃には、あらゆるストレスやしがらみ、思い込みから自由になっている、という。うーん、こりゃあ兎も角、体験してみないとわからんなぁ…。というのが読後で感じられた一番の感想だった。

@視覚を失った人々の世界が、我々が思い込んでいる以上に、うんと豊穣に満ち、またロジック(論理)的思考に支えられているということは、この本ではじめて知る事が出来た。彼等は視覚を失った分だけ、他の感覚を一層鋭く研ぎ澄まし、耳で、肌で、鼻で、そして舌で、森羅万象のすべての姿を捉えているのだ、と。私たちのように映像的なイメージで捕らえるのではなく、別の形をとって捉えているのだ。自分に入ってくる情報を殆んど視覚に頼っている我々には、視覚がなんらかの理由で失われぬ限り、到底真似など出来はしない。

@こういった視覚障害の人々も含め、障害を抱えて生きる人々を巡る問題で、重要な事が本書の後半、茂木が志村さんやアテンドの方々との懇談で立ち現われる。それは障害者の存在を「腫れ物に触る」ように扱ったり、サヴァンやアスペルガーなどの広範性脳機能障害を持つ人々で、我々よりも天才的な能力に長けているのに、世間の「常識」にコントロールされた親や親戚が「世の中に晒しちゃ可哀想」だからといって、本人の才能開花を妨げている事が揚げられている。

@事実、日本や伊太利亜以外の先進国(英国や米国など)では脳障害のある子を世間から隠さず、才能を見つけ出して開花させ、芸術家などに大成させている例が後を絶たない。

@英国の盲目のピアニスト、デレク・パラヴィチーニという人物は、胎児期網膜症とサヴァンの二重障害者だが、絶対音感の持ち主だった。アダムという先生に才能を見出され、粘り強く訓練を続けた結果、ピアニストとしての才能を花開かせ、今では優れたピアニストとして活躍できるに至った。私は以前、彼のドキュメントをTV番組で観た事があり、その能力の卓越せること、まさに神業のようだと、感嘆したのを昨日のように覚えている。

@「世間の常識」の所為で、そのような障害を抱えた子を持つ親や親戚が「世間様に恥ずかしいから」といってその子をただ隠してしまう。特別支援施設に入れても、世間のセオリーに適応させる事ばかりさせ、英米のように才能を開花させるどころか、結局、コミュニケーションへのコンプレックスを増大させ、社会に出た時、かえって適応できなくなったり、年をとるまで一生涯、その支援施設から出られずに生きていることが多いように思える。本書でもその問題点が話し合われている。

@やはり、日本では障害をもつ人々を特別視したりしすぎか、あるいは「劣ったもの」と見做しすぎている。いや「劣ったもの」「自分たちとは違うもの」と見なすから「特別視」するんだろうなぁ。障害者だって実は我々と同じく世間ずれそている。パチンコなどギャンブルに夢中なのもいるだろうし、根性悪いのも結構いるだろう。天使のように聖なる存在では決してないのだ。そこを「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」の主催者&アテンドスタッフはわかってもらいたいのに違いない。

@自分としては、兎も角も、視覚を失った人々の、考えの深さ、生きる世界の想像を越えた豊かさに、ほんの文章上だけでも触れたことで、本書を読んだ価値は十二分にあると思った。障害を障害と見なさず、自分の特性、個性、と前向きに捕らえ、明るく生き抜こうとしているアテンドの皆さんの姿勢に、心から敬意を示さずにはいられぬ。少なくとも、目明きである自分にとっても大いに励まされた部分が多かった。

@私は思う。彼等はまさに、視覚を奪われる宿命を嘆かず、寧ろその暗黒の果てに見えるもの(「ダイアログ・イン・ザ・ライト」という言葉が本書に出てくるが、「光」のことなのだろうか)を目指しているのだと。そしてそれこそ、彼等が暗闇と引き換えに得んとしている「心の希望の光」なのかもしれないのだ…と!


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Kimball

ただいま読書中っす!\(^o^)/
by Kimball (2011-02-27 11:46) 

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